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老後も安心して暮らすには、貯蓄が必要だといわれています。
金融庁の金融審議会によると、その額は夫婦2人の世帯で2,000万円だそうです。実際に60代の世帯は、どれくらい貯蓄しているのでしょうか。60代から貯蓄を増やす方法も紹介します。
60代の平均貯蓄額はどれくらい?
まずは、60代の平均貯蓄額をチェックしてみましょう。
60代の平均貯蓄額は1,849万円
知るぽるとの「家計の金融行動に関する世論調査 」によると、平成30年における60代の2人以上世帯の平均貯蓄額は1,849万円でした。一方、中央値は1,000万円です。どちらかといえば、後者のほうが実際の状況に近いといえるでしょう。
平均値は、数値が極端に大きい人と小さい人に影響されます。そのため、大勢の実感とかけ離れがちです。一方、中央値はデータを順番に並べたとき、ちょうど中央に位置する人の数値です。より大勢の実感に近くなるとともに、半数は中央値以下(以上)であることが分かります。
ちなみに単身世帯では、平均値が1,613万円、中央値が500万円でした。
出典:知るぽると 金融広報中央委員会(事務局 日本銀行情報サービス局内)「家計の金融行動に関する世論調査」
(https://www.shiruporuto.jp/public/data/movie/yoron/)
貯蓄保有世帯のみだと2,415万円
なお、この結果には金融資産を保有していない世帯、つまり貯蓄がゼロの世帯を含んでいます。
貯蓄ゼロの世帯を除くと、2人以上世帯の平均貯蓄額は2,415万円、中央値は1,500万円です。
単身世帯では平均貯蓄額が2,218万円、中央値が1,100万円でした。
回答者の数は、2人以上世帯の場合、貯蓄ゼロを含むと853世帯、除くと665世帯です。
単身世帯では貯蓄ゼロを含むと581世帯、除くと426世帯でした。
あくまでも回答者数からの判断ですが、2人以上の世帯で約22%、単身世帯で約27%が貯蓄ゼロとなります。
60代から資産を増やさないと大変なことに
60代になると年金を受給できますし、退職金をもらえる人もいるはずです。それでも貯蓄は必要なのでしょうか。
老後にもらえる年金だけで生活するのは困難
夫婦2人の世帯が老後に必要とする生活費は、生命保険文化センターの「生活保障に関する調査/令和元年度 」によると、平均で22.1万円でした。
これは最低限の数値であり、ゆとりを持たせるとなれば、さらに平均で14万円が必要だと感じているようです。
出典:(公財)生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査」より
(http://www.jili.or.jp/using/index.html#copyright)
受給される年金の平均は、厚生年金で約15万円、国民年金で約5万円といわれています。
夫婦が2人とも厚生年金を受給していれば約30万円となり、最低限の生活費は確保できますが、ゆとりある生活には、ほど遠い状況です。
2人とも国民年金であれば約10万円なので、最低限の生活を送るのさえ難しいでしょう。
それを補うのが退職金ですが、すべての企業で支給されるわけでなく、自営業者にはそもそも存在しません。
金額も厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査 」によると、大学・大学院卒で1,983万円です。仮に月10万円ずつ崩すと16年6ヶ月で使い切ってしまいます。
出典:厚生労働省ホームページ
(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/18/dl/gaiyou04.pdf)
現在の日本は長寿化が進んでおり、平均寿命は男性、女性ともに80歳を超えています。
65歳で定年を迎えたとしても、約20年分の老後資金が必要になるのです。
長生きするとますます支出が増える
ゆとりある生活を送りたい世帯は、その使い道として旅行などのレジャー、趣味、子供や孫への援助などを考えています。
けれども、長生きするほど別の支出が発生するため、必ずしもゆとりのある資金すべてを見込みどおりに使えるとは限りません。
例えば医療費です。
高齢になるほど病気にかかりやすくなり、通院や入院する回数が増えます。
もし自力で生活できなくなったら、介護の利用や老人ホームへの入居も考えなければいけません。
長生きによって、そうなる可能性は高まってきます。節約して老後を過ごすにしても、貯蓄があると安心です。
必要な貯蓄額は、世帯の年金受給額や退職金、生活費によって異なります。
まずは20年分の予定されている収入や支出を計算して、どれくらい不足するか把握しましょう。
例えば、夫が65歳で定年を迎えたばかりの世帯が、夫婦2人とも厚生年金を受給しており、ゆとりある暮らしをしたいと思っているとします。
先ほどのように毎月の収入が約30万円で、支出が約36万円だとすれば、毎月約6万円が不足します。20年で約1,440万円になります。退職金が1,983万円あるなら、貯蓄しなくても問題はないでしょう。
逆に夫婦2人とも国民年金であれば、毎月の収入は約10万円となるため、毎月の不足額は約26万円です。
20年で約6,240万円となります。退職金はありませんから、すべてを貯蓄で補わなければいけません。
賢く老後資金を貯めていくには
60代になって定年を迎えると、収入は年金しかありません。
それでも老後資金を貯めることはできるのでしょうか。
資産形成をする
もし退職金があるなら、元手にして資産形成できます。
ただし、現役の頃と違って損をしたとき収入でカバーできないため、大きく減らすのは厳禁です。
株やFX、仮想通貨は大きく増やせる反面、大きく減らす可能性も多分にあります。
投資信託であれば、比較的値動きがゆるやかです。プロの投資家が集めたお金で複数の金融商品に投資するため、リスクが分散されます。
さらに積立で購入するタイミングも分散すると、値動きの影響を受けづらくなるでしょう。
また、NISA(少額投資非課税制度)なら、1年の元本120万円に対して譲渡益や配当にかかる20.315%の税金が非課税になります。適用期間は1つの年度につき5年です。
NISAの積立版である「つみたてNISA」であれば、非課税となる元本の上限は毎年40万円ですが、適用される期間は20年もあります。
自宅を現金化する
もし、持ち家があるなら、売却すれば現金化できますが、退去しなければいけないのが難点です。
ハウスドゥの「ハウス・リースバック」(http://www.housedo.co.jp/leaseback/about/)は、売却後に賃貸借契約を結ぶことで、引っ越しをせずにそのまま住み続けられます。
ご相談から現金化までは標準で40日ですから、急にお金が必要になったときもお役に立てるでしょう。
同じく、自宅を担保にお金を借りて住み続けられるリバース・モーゲージより物件の制限が少なく、使い道も自由です。
60代になって貯蓄が不足していると感じられるときは、ぜひ相談してみてください。
※物件によりご利用できない場合もあるので事前にご確認ください。
まとめ
60代の2人以上世帯の平均貯蓄額は1,849万円です。貯蓄がゼロの世帯も約22%います。
老後に必要な貯蓄額には個人差がありますが、ゆとりある生活を送ったり、長生きに備えたりするためにも、ある程度の貯蓄をしておくほうが安心です。退職金を運用すれば、60代からでも資産形成ができます。