【FP解説】離婚の財産分与で家を分ける方法は?住み続ける場合や注意点も解説

2025.04.3 更新

この記事を読むのに必要な時間は約 15 分です。

離婚する際は、共有財産を夫婦で分ける必要があります。婚姻期間中に購入した家やマンションは財産分与の対象です。

しかし不動産は簡単に分割できず、さらに住宅ローンが残っていると財産分与が非常に複雑になり、トラブルになる場合があります。

そこで今回は離婚時に持ち家を財産分与する方法を、押さえておくべきポイントや注意点とあわせてわかりやすく解説します。

離婚時の財産分与

財産分与とは、離婚をした者の一方が他方に対して、夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配を請求することができる制度です。

ただし、夫婦の合意があれば離婚時の財産分与を放棄することもできます。

財産分与の種類

財産分与は、以下の3つに分けられます。

1.清算的財産分与

夫婦が婚姻中に共同で築いた財産を原則として公平に分配する方法です。

特別な事情がある場合には、それぞれの貢献度に応じて調整されることもあります。3つの財産分与の中で最も一般的な方法です。

2.扶養的財産分与

離婚後、経済的に自立が難しい者に対して自立できるまでの間の生活費の支援を目的として行われる財産分与です。

専業主婦(夫)や病気などで働けないなどの場合に認められることがあります。

3.慰謝料的財産分与

配偶者の有責行為(不倫やDVなど)によって離婚に至った場合、精神的な苦痛を償うための要素を財産分与に含めることがあります。

ただし、慰謝料と財産分与は本来別の請求として扱われることが多いため、必ずしも財産分与の中で慰謝料的な要素が加味されるとは限りません。

対象となる財産

財産分与の対象には、現金、預貯金、有価証券、年金(婚姻期間中に形成された部分)、退職金、家、土地、車などが含まれ、また、負債(婚姻生活のために負った借金)も分与の対象となることがあります。

それぞれの財産分与の請求は話し合いで決定されますが、合意に至らない場合には家庭裁判所の調停や審判により決定されることもあります。

財産分与の割合

財産分与の割合は、原則として婚姻期間中に築いた夫婦の財産を2分の1ずつに分けるとされています。

夫婦共働き、または夫婦の一方が専業主婦(夫)のいずれの場合でも財産の半分を得る権利があります。

ただし夫婦の合意があったり、築いた財産の貢献度に偏りがあったりする場合は、例外的に財産分与の割合変更が認められることがあります。

マイナスの財産(負債)

ローンや借金といったマイナスの財産も財産分与の対象です。

婚姻期間中の借金は、借金が夫または妻のどちらか一方のみの名義であったとしても、それが結婚生活を営むために必要であった場合は夫婦共同の債務と見なされます。

住宅ローン、教育ローン、車のローンなどは財産分与に含まれますが、結婚生活に関係のないギャンブルなどによる個人的な借金、または夫婦の一方が単独で始めた事業に関連する借金などは、原則として財産分与の対象にはなりません。

マイナスの財産がある場合は、基本的にプラスの財産からマイナスの財産を差し引いた残りの金額を分配します。

ただしプラスの財産からマイナスの財産を差し引いて結果としてマイナスになったり、ゼロになったりする場合は、財産分与そのものは発生しないことがあります。

しかし、その場合でも夫婦間で債務の負担割合を協議したり、裁判所の判断を仰いだりすることが必要になるため注意が必要です。

家やマンションを財産分与する方法

結婚してから購入した家やマンションは、名義に関係なく離婚時の財産分与の対象です。

不動産を分割する場合は、「家を売却して現金化する」もしくは「どちらか一方が住み続け、もう一方は現金を受け取る」の2つの方法があります。

それぞれについて詳しくみていきましょう。

売却して現金化する

家族で住むために購入した家やマンションに夫婦どちらも住まないのならば、家を売って現金化して分けるのが、シンプルでわかりやすい不動産の財産分与の方法です。

割合の計算もしやすく、金銭で分配すれば財産分与後のトラブルも起こりにくくなります。

ただし、住宅ローンが残っている場合は、アンダーローンかオーバーローンかを確認する必要があります。

アンダーローンの場合

アンダーローンとは、住宅ローンの残高よりも売却額が高い状態をいいます。アンダーローンであれば、家を売却することで住宅ローンが完済できるので、離婚後に支払い続ける必要がなく、住宅ローンを返済して残ったお金を分けることができます。ただし、買い手が見つかり不動産売却が完了するまでは財産分与が終わらないので注意しましょう。

オーバーローンの場合

オーバーローンとは、住宅ローンの残高よりも売却額が低い状態をいいます。

本来不動産は売却資金で住宅ローンの残債が完済できない場合には売却できませんが、金融機関の許可が得られれば住宅ローンの残債があっても任意売却して現金化することが可能です。

ただし任意売却によって得た資金を差し引いた残りの住宅ローンは、別途準備する必要があります。

片方が住む場合

離婚後、どちらか一方がそのまま家に住み、もう一方には現金を渡すこともできます。

住み続けるのが住宅ローンの債務者である場合と債務者ではない場合によって対応方法が異なります。

債務者が住み続ける場合

住宅ローンの名義人が、持ち家に住みながら支払いを続けるのが最もシンプルなケースです。この場合家に住み続けることはできますが、分与割合に応じた現金と残っている住宅ローンを支払うことになります。

債務者ではない方が住み続ける場合

債務者が退去し、もう一方の方が住み続ける場合は、住み続ける方が住宅ローンを支払い続けることができるかどうか、まず金融機関に相談しましょう。

住宅ローンは、ほとんどの場合、債務者が居住することを条件に融資されているため、もし住宅ローンの返済が滞ると金融機関は差し押さえの申し出を行います。

そうすると、立ち退きを迫られる恐れがあります。

住み続ける方にローンを返済できる経済力があるなら、金融機関と相談のうえ、住宅ローンの借り換えを行い、単独名義でローンを支払う方法を検討するとよいでしょう。

ただし、借り換えには審査が必要であり、収入や信用力が求められます。

資金がない場合はリースバックを活用してはいかがでしょうか。

リースバックとは、家をリースバック事業者に売却して権利を渡すのと引き換えに現金を得て、売却後も家賃を払いながら住み続けることができるサービスです。

共同で住宅ローンを借りている場合

夫婦で住宅ローンを支払っている家からどちらかが退去すると、住宅ローンの契約条件が変わってしまうため、金融機関の承認なしに名義変更を行うことはできません。

ただし、住み続ける方が十分な収入や信用力を持っている場合、住宅ローンの借り換えによって単独名義にできる可能性があります。

住み続ける方の単独名義にできれば、将来売却するときにスムーズな対応が可能です。

逆に、共有名義のままだと、将来的に不動産を売却するときに、もう一方の同意が必要になり、トラブルの原因となることがあります。

そのため、金融機関に相談して、住宅ローンの借り換えをして、単独名義にすることを検討しましょう。

不動産の財産分与をするとき確認すべきポイント

不動産は高額な財産であり、分け方が複雑になるため、しっかりと確認しておくことが大切です。押さえておくべきポイントがいくつかあります。

不動産の名義

財産分与の対象となる不動産の名義人がどちらかの単独名義なのか、夫婦の共有名義なのかを確認しましょう。

不動産の名義人がわからない場合は、法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得すれば確認できます。

また共有名義の場合、それぞれの持分割合が決まっていますが、この持分割合がそのまま財産分与の割合になるわけではありません。

家の売却は、不動産の名義人しか売却手続きを進めることができません。夫婦の共有名義になっている場合は、両方の同意が必要になります。

住宅ローンの債務者と残債

登記事項証明書(登記簿)の「権利部(乙区)」には、住宅ローンの抵当権が設定されている場合、金融機関(抵当権者)や担保提供者(債務者)の情報が記載されていることがあります。

 ただし、担保提供者と実際の債務者が異なるケースもあるため、正確な債務者情報を確認するには、以下の書類も確認すると確実です。

  • 住宅ローンの契約書(契約当初の名義人を確認)
  • 住宅ローンの返済明細書(現在の債務者と返済状況を確認)
  • 住宅ローンの残高証明書(ローン残債額を確認)

不動産を売却する場合や財産分与を行う際には、住宅ローンの債務者が誰か、残債がいくらあるかを正確に把握しておくことが重要です。

不動産の価格

家やマンションの価格は築年数や経済状況、立地、周辺環境、市場の需要などによって変動します。

売却するなら、いくらぐらいで売れそうかを不動産会社に査定してもらいましょう。

また査定を依頼する際は、必ず複数社に依頼して査定金額を比較することが重要です。

  • 仲介売却の査定価格(市場価格に近いが、売却まで時間がかかる)
  • 不動産買取の価格(即現金化できるが、売却価格が低めになる)

これらの違いを理解し、自身の状況に合った方法を選びましょう。

特有財産

結婚している時に夫婦が協力して築いた財産ではなく、一方が個人で築いた財産を特有財産といいます。

特有財産は共有財産と違って財産分与の対象外で、結婚前の貯蓄や結婚後の親からの相続や贈与などが特有財産に当たります。

これらを証明するには、銀行口座の取引明細書や贈与契約書、遺産分割協議書などが必要となるので用意しておきましょう。

夫婦で話し合う

財産分与の対象となるものが確定したら、分配配分や支払い・受け渡し方法などを夫婦で話し合います。

話し合いの際、未然にトラブルを防ぐために、合意した内容を書面にして署名・押印を行い、双方が保管することが重要です。

もし話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所で離婚調停を申し立て、調停委員を介して財産分与を含めた離婚条件を話し合うことができます。

  • 調停が不成立の場合は、裁判所が職権で審判を下すこともあります(審判離婚)。
  • 審判にも至らなかった場合は、最終的に離婚訴訟を起こし、裁判官が財産分与の内容を決定します。

離婚の財産分与のために住まいを売る際の注意点

離婚時の財産分与で不動産を売るときに気をつけることがありますので、きちんと確認しましょう。

財産分与の請求ができる期間は2年

財産分与を請求できるのは、離婚が成立してから2年間と法律で定められています(民法768条2項)。

この期限は家庭裁判所に財産分与の調停や審判を申し立てられる期限です。

ただし、2年以内に申し立てを行えばその後も審理は継続されるため、2年以内に財産分与の結果を確定させる必要はありません。

また離婚後2年が経過している場合でも、夫婦双方が合意すれば任意での財産分与が可能です。

しかし、2年を過ぎると法律上の請求権は消滅するため、相手が拒否すれば財産分与を請求することはできなくなります。

連帯保証人は債務者に変わって返済義務を負うことがある

住宅ローンの連帯保証人になっていると、もし債務者が返済できなくなったときに代わりに返済する義務を負います。

この義務は家に住み続けても住み続けていなくても、発生するため、注意が必要です。     

財産分与の状況に応じて連帯保証を外す、または連帯保証人の変更を金融機関に交渉することも必要です。

もし連帯保証人として住宅ローンを支払うことになってしまったら、支払った分を債務者に請求する「求償権」を行使することもできます。

離婚公正証書を作成する

夫婦の話し合いにより財産分与や養育費など金銭の取り決めをした場合には、離婚公正証書を作成しておくのがよいでしょう。

離婚協議書がなくても、離婚公正証書に記載する内容が固まっていて、夫婦の間に合意があれば公証役場で作成できます。

さらに強制執行認諾文言付き公正証書であれば、裁判手続きを経ずに強制執行が可能となります。

まとめ

離婚時の不動産の財産分与は、売却して現金化するのか、片方が住み続けるのかといったことから、住宅ローンが残っている場合にはどうするのかといったさまざまな事項を話し合って決める必要があります。

その中でも家は長年住んでいると思い入れや愛着をもつ方が多くいらっしゃいます。

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 ハウスドゥ
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ハウス・リースバック編集部

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