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自営業者は会社員に比べると退職金が無く、国民年金しか支給されないので、それに代わる老後資金を自ら用意しなければいけません。どのように老後資金を形成すればいいのか、既に老後を迎えている場合の対策もあわせて紹介します。
自営業者が国からもらえる老後のお金は少ない
平成30年度の国民年金の支給額は、40年間満額支払った場合で年779,300円(ひと月あたり約65,000円)です。そこから国民健康保険料や介護保険料が引かれるため、実際に使える金額はさらに少なくなります。途中で未納や免除があると、もっと少ないでしょう。
一方、会社員だった人には国民年金に上乗せして厚生年金が支給されます。厚生労働省が平成29年12月に公表した「平成28年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、平均月額は145,638円です(※1)。国民年金だけが支給されるより倍以上の差があります。
※1:
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12500000-Nenkinkyoku/H28.pdf
総務省が平成30年2月に公表した平成29年の「家計調査報告(家計収支編)」によると、65歳以上で2人以上の世帯の平均的な生活費は、月247,701円です(※2)。自営業者の夫婦が国民年金だけで生活しようとしても、月12万円ほど足りない計算になります。
※2:
http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/nen/pdf/gy02.pdf
自営業者が老後もゆとりある暮らしをするには年金だけでは不十分で、会社員以上に老後資金の形成が重要だといえるでしょう。
自営業者が老後資金を増やすには?
冒頭で述べたとおり、自営業者は厚生年金に加入できず、退職金もありません。けれども、それに代わる対策として、いくつかの公的制度があります。これらを上手に活用すれば老後資金が確保できるだけでなく、毎年の所得税や住民税もお得です。すべての制度を上限まで利用できれば、年間の所得控除額は165.6万円にもなります。
掛け金に回す金額は、年収の15~20%が望ましいでしょう。平成29年9月以降の厚生年金保険料率(18.3%)とほぼ同じだからです。一般的に推奨される、収入から貯金に回す割合にも相当します。
方法1:小規模企業共済を利用する
国の機関の中小機構(中小企業基盤整備機構)が運営する制度で、退職金の無い自営業者や規模の小さい企業の経営者、役員が同等の金額を貯められます。毎月の掛け金は1,000円から500円単位で設定でき、上限は7万円です。掛け金を上限まで積み立てた場合は年84万円を所得控除できます。
積み立てた共済金は、廃業したときか65歳以上になると受け取れます。一括だけでなく条件を満たせば分割での受け取りも可能です。一括で受け取ったときは退職所得控除を、分割の場合は公的年金等控除を受けられます。ただし、20年未満で廃業や年齢以外の理由で任意解約すると、元本割れするので注意が必要です。
他にも小規模企業共済の契約者は、事業資金を低金利で借りられる「貸付制度」を利用できます。掛け金の範囲で最大2,000万円まで利用可能で、年利は最大でも1.5%です。事業で万が一の事態が発生したときの心強い味方になってくれるでしょう。
方法2:国民年金基金を利用する
国民年金基金は、厚生年金の代わりに国民年金へ上乗せするための個人年金です。60歳未満の国民年金の第1号被保険者、または60歳以上65歳未満の任意加入者が利用できます。
終身年金と確定年金の2種類があり、最初の1口は必ず終身年金でなければいけません。1口の掛け金は加入時の年齢や年金の種類によって異なり、毎月の上限は次に紹介する個人型確定拠出年金と合わせて68,000円(年81.6万円)です。小規模企業共済と同じく掛け金は全額所得控除になり、受け取り時も公的年金等控除が適用されます。
なお、国民年金には毎月400円を追加で納めると、納めた月数×200円が上乗せされる「付加年金」もあります。2年(24ヶ月)納めると上乗せされる年金が4,800円になって、納めた分の元が取れる仕組みです。ただし国民年金基金との併用はできません。
方法3:個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用する
「確定拠出年金」は加入者が掛け金の運用先を指定できる年金です。運用結果によって将来受け取れる年金の額が変わります。個人型は「iDeCo」の愛称でおなじみです。毎月の掛け金は国民年金基金と合わせて68,000円が上限で、運用中の利益に税金はかかりません。
NISA(少額投資非課税制度)にも似ていますが、iDeCoの掛け金は全額所得控除になります。受け取り時も一括なら退職所得控除、分割なら公的年金等控除の対象です。その代わり60歳まで(加入期間が10年に満たない場合は遅くても65歳まで)一切引き出しはできません。
iDeCoで運用できるのは定期預金と保険、投資信託の3種類です。このうち定期預金と保険は元本が保証されていますが、大きく増やせません。投資信託は大きく増やせる可能性がある反面、元本割れするリスクがあります。商品の性質をよく理解した上で運用したいものです。
定年後に自営業者が老後資金を作る方法
小規模企業共済や国民年金基金、iDeCoは、加入が早いほど老後資金を大きく増やせます。老後が迫ってから加入しても、期待するほどの成果は得られないかもしれません。定年と呼ばれる年齢になってから、老後資金が足りないと気づく場合も考えられます。そんなときは、どんな対策があるのでしょうか。
事業を継続する
自営業には定年が無く、65歳を過ぎても仕事を続けられるのがメリットです。事業収入があれば年金の不足分をカバーできるでしょう。ただし、いつまでも働けるとは限りませんし、以前より稼げない可能性もありますから頼り過ぎるのは禁物です。多く稼げたら使わず貯金に回して、少しでも老後資金が尽きるのを先送りしましょう。
持ち家の処分を考える
持ち家があるなら、売却して老後資金にすることが可能です。ただし買い手が見つかるまで時間がかかったり、期待したほどの高値で売れなかったりするリスクがあります。何よりも、持ち家を売却した後は退去しなければならず、新たな住まいを探さなければいけません。高齢者の賃貸契約は断られる場合があります。
そこでおすすめしたいのが「リースバック」です。リースバックとは業者が物件を買い取り、その後はリース契約を結んで住み続けられるシステムです。生活環境を変えずに持ち家を現金化できます。数百万円から数千万円の老後資金を用意できれば、ゆとりのある暮らしを送れるでしょう。
まとめ
自営業者が老後資金を増やすには、小規模企業共済や国民年金基金、iDeCoといった公的制度を利用する方法があります。いずれも早くから始めるほど大きく老後資金を増やせるでしょう。掛け金が全額所得控除になり、受け取るときも税控除が適用されるメリットもあります。
老後になってから資金を確保する場合は、リースバックで持ち家を現金化するのがおすすめです。特にハウスドゥの「ハウス・リースバック」は、全国の幅広い物件に対応しております(※物件により買取できないケースもございます)。
売却後もハウスドゥが貸主になってリース契約を結びますので、安心してご利用いただけるでしょう。再度購入も可能です。ぜひともご検討ください。