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国民年金とは、日本に住所をもつ20歳以上60歳未満のすべての人が原則として加入する公的年金制度です。
国民年金法の第7条により、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者は、「国民年金の被保険者」となり、年金保険料を納める義務があります。
本記事では、保険料を支払っていない場合の影響や、支払いが困難な場合に利用できる「免除制度」や「納付猶予制度」について解説します。
また、年金以外の老後資金対策についてもあわせてご紹介します。
Contents
国民年金の仕組み
国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が対象となる公的年金制度です。
自営業者や無職の人は第1号被保険者、会社員や公務員は厚生年金に加入する第2号被保険者、そして第2号被保険者の配偶者で扶養に入っている人は第3号被保険者に分類されます。
保険料は2024年度で月額16,980円ですが、第1号被保険者は全額自己負担、第2号は厚生年金保険料として給与から控除され、事業主(勤務先)が半額を負担します。
第3号は直接保険料を支払うことはなく、その負担分は第2号被保険者が加入する厚生年金保険制度の中で賄われる違いがあります。
第3号被保険者制度は第2号被保険者に扶養されている配偶者を対象としているため、第1号被保険者に扶養されている配偶者は、第3号被保険者とはならず、自身が第1号被保険者として保険料を納める必要があることに注意してください。
また、納付した保険料は、将来の老齢基礎年金として受け取れるほか、障害や死亡時に障害基礎年金や遺族基礎年金として支給されます。
意外と低い国民年金保険料の納付率
国民年金の被保険者は第1号、第2号、第3号の3種類に分かれます。
第1号は自営業者や学生、無職の方など、国民年金だけに加入している被保険者です。
第2号は会社の厚生年金や教職員などの共済年金に加入している被保険者となります。
第3号は第2号被保険者に扶養されている配偶者です。
このうち第2号と第3号の被保険者は、会社や共済組合が年金保険料を給与から強制的に徴収するため、通常は未納が発生しません。
一方、第1号被保険者は、自身で保険料を納付する必要があり、納付忘れや経済的事情により未納が発生する可能性があります。
厚生労働省の「令和5年(2023年)度の国民年金の加入・保険料納付状況」によると、国民年金の納付率は83.1%でした。
年齢別に見ると平均を上回っているのは40代以降で、25~29歳の現年度納付率は72%を下回っています。
令和4年度の納付率が80.7%だったのと比べれば、これでも改善したほうですが、意外と低く感じます。
年金を払っていない人は老後がキケン!
では、年金保険料を納めていないと、どんな問題が生じるのでしょうか。
老後にもらえる年金が減る
国民年金の1つである老齢年金を受給するためには、最低でも通算して10年(120ヶ月)以上年金保険料を納めていなければいけません。
かつては25年(300ヶ月)以上の納付期間が必要でしたが、2017年8月の制度改正により、現在は10年以上で受給できるようになりました。
ただし、納付期間が短いと受給できる老齢年金は少なくなります。
全期間(40年=480ヶ月)納めた場合、2024年11月時点での満額は、受給額は67歳以下の方は年額約816,000円、68歳以上の方は年額約813,696円です。
これに対して、最低限の10年しか納めていない場合、 67歳以下の方は年額約204,000円、68歳以上の方は年額約203,424円にしかなりません。
当然、10年に満たない場合は、老齢基礎年金を受給することができません。
たとえ満額でも、月額にすると67歳以下の方は 約68,000円、68歳以上の方は約 67,808円と、決して高額ではありませんが 、あるのとないのでは雲泥の差です。
老齢年金は生涯にわたって 受給できるのですから、他の方法で簡単に賄えるものではありません。
年金をまったく受給できない場合、老後の生活は一層厳しくなる可能性が高いのです。
障害年金や遺族年金がもらえない可能性がある
国民年金には、病気やケガで障害が残ったときに受給される「障害年金」と、被保険者が亡くなったとき子供のいる配偶者や子供に支払われる「遺族年金」もあります。
受給条件は以下のとおりです。
- 障害年金……初診日の前々月まで加入期間の2/3以上保険料が納付または免除されており、直近の1年間に保険料の未納がないこと。
- 遺族年金……被保険者が死亡した時点で加入期間の2/3以上保険料が納付または免除されていること(ただし、令和8年(2026年)4月1日前までは、死亡の前々月までの1年間に保険料の未納が無いこと)。
つまり、年金保険料を納めていない場合、これらの給付を受給することができません。
障害年金は、思うように働けなくなったときの大きな支えになりますし、遺族年金はご家族の生活を守る重要な制度です。
将来の安心のためにも、年金保険料の納付はとても大切です。
財産を差し押さえられることもある
国民年金の保険料を長期間滞納すると、最終的に財産を差し押さえられる可能性があります。
これは、日本年金機構が悪質な未納者に対して強制的に保険料を徴収する措置です。
まず催告状や督促状が届き、その後も納付が確認できない場合には、銀行口座や給与、不動産などが差し押さえの対象になります。
特に滞納額が高額で悪質とみなされた場合には厳しい対応が取られることがあります。
ただし、支払いが困難な場合には、免除制度や納付猶予制度を利用することができます。
これらの制度を早めに利用することで、未納によるペナルティを回避し、将来の年金受給額を守ることが可能です。
滞納を放置せず、速やかに相談や手続きを行うことが重要です。
年金を払っていない人の対処法
年金保険料の重要性が分かったところで、これまで払ってこなかった人は、どのように年金の受給額を増やせばいいのでしょうか。
追納制度
追納制度は、過去に国民年金保険料の免除や納付猶予を受けた方が、後からその期間分を納付できる制度です。
追納制度を利用できる人
追納制度を利用できるのは、過去に保険料の全額免除や一部免除、納付猶予を受けた方です。
これらの期間は、そのままにしておくと将来の年金額が減る可能性がありますが、追納によって不足分を補うことができます。
特に老後に向けて年金額を増やしたい場合、追納制度は有効な手段です。
免除や猶予を受けた期間がある場合受け取れる年金の金額が減る場合がありますが、追納することでその分を補うことができます。
手続きは年金事務所で行い、収入状況や家計の余裕に応じて計画的に進めることが重要です。
なお、免除や猶予を受けた期間から3年以上が経過した場合には、一定の加算額が上乗せされるため、早めの手続きが推奨されます。
追納を活用することで、年金受給額を確保し、老後の生活の安定につなげることができます。
追納できる期間
追納できる対象の期間は、追納が承認された月の前10年以内に免除や猶予を受けた保険料の期間です。
追納は古い期間の分から納付していきます。
追納する保険料
追納する保険料追納する保険料は、原則として免除や猶予を受けた当時の保険料額が基本ですが、追納する期間が免除や猶予を受けた時点から3年以上経過している場合一定の加算額が上乗せされる場合があります。
手続き
追納の手続きは、最寄りの年金事務所で行います。
手続きには基礎年金番号が記載された年金手帳や本人確認書類が必要です。
また、過去に免除や猶予を受けた期間の証明書類が求められる場合があります。
手続きは窓口のほか、郵送やオンラインでも可能な場合がありますので、事前に日本年金機構の公式ウェブサイトで確認するとスムーズです。
国民年金保険料の免除
国民年金保険料がどうしても支払えない場合は、免除制度を利用して保険料の全額または一部を免除することができます。
失業等による特例免除
失業などで収入が激減した場合、特例免除制度を利用できます。この制度では、「雇用保険 受給資格者証「や「離職票」を提出することで、保険料の全額または一部免除が適用されます。
特例免除は、収入が回復するまでの一時的な措置として活用できるため、経済的な負担を軽減することができます。
配偶者からの暴力による特例免除制度
配偶者からの暴力(DV)を受けている場合、特例として住民票を移さずに保険料免除を申請できます。
この制度では、配偶者暴力相談支援センターや市区町村の発行する証明書が必要です。DV被害者は生活が不安定になりやすいため、申請者の安全を優先しながら、経済的な負担を軽減する仕組みになっています。
産前産後期間の免除制度
妊娠中や出産直後は、経済的にも体力的にも負担が増える時期です。
このため、産前産後期間(出産予定日の前4カ月と後4カ月)における保険料が全額免除される制度が設けられています。
この期間の免除は申請が必要で、出産予定日が分かる医師の証明書や母子手帳のコピーなどの書類を添えて手続きを行います。
国民年金保険料の納付猶予
国民年金保険料は、一定の納付猶予期間が経過したら支払いを再開する仕組みがあります。それが「猶予制度」です。猶予制度には以下のようなものがあります。
納付猶予制度
納付猶予制度は、経済的に保険料を納めることが難しい20歳から50歳未満の方で、本人や配偶者の所得が一定基準以下の場合に利用できる制度です。
この制度を利用すると、一定期間保険料の納付が猶予されますが、猶予された期間も年金受給資格期間にカウントされます。
ただし、猶予期間中の保険料は納付していないため、将来の年金受給額には反映されないため注意が必要です。
後から追納することで、この期間を受給額に反映させることも可能です。
学生納付特例制度
学生納付特例制度は、学生が在学中の保険料納付を猶予できる制度です。
大学、短大、高等専門学校、一部の専修学校などに通う学生が対象で、所得が一定基準以下である場合に適用されます。
この制度を利用することで、年金受給資格期間を維持できる一方で、猶予期間中の保険料は将来の年金額には反映されません。
ただし、卒業後に追納することで、受給額を増やすことが可能です。申請には、学生証や在学証明書が必要で、年度ごとの更新が必要となります。
年金以外の老後資金を蓄える方法
毎月コツコツ年金保険料を納付していても「将来、年金がいくらもらえるかわからない」と不安になることもあるでしょう。そんな時は、未来の年金を補完する手段として投資制度を活用
する方法があります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは、自分で掛金を拠出して資産運用を行い、老後資金を準備する制度です。掛金は全額所得控除の対象となり、運用益も非課税、受取時にも税制優遇が適用されるため、手厚い節税効果が得られる点が魅力です。
ただし、原則として60歳まで引き出せないため、長期的な資産形成を目的とした活用が求められます。
また、運用に伴うリスクもあるため、自分のリスク許容度やライフプランに合った選択が重要です。
NISA
NISAは、個人が投資を始めやすくするために設けられた制度で、運用益が非課税になる仕組みです。
現在は「つみたて投資枠」や「成長投資枠」といった選択肢があり、それぞれ非課税期間や年間の投資上限が異なります。
少額から始められるため、投資初心者でも安心して取り組むことができます。
ただし、投資にはリスクが伴うため、自分のリスク許容度や目標に合った投資商品を選ぶことが重要です。
個人年金保険
個人年金保険は、保険会社が提供する老後資金準備のための商品です。
毎月一定額を積み立て、契約時に定めた年齢から年金として受け取ることができます。
商品によっては利率保証があり、リスクを抑えた資産形成が可能です。
また、契約内容により「個人年金保険料控除」の対象になり所得税や住民税の軽減につながるため、節税効果も期待できます。
貯蓄型の資産形成として、老後の生活を安定させる手段として検討する価値があります。
リースバック
持ち家があれば、老後の資金が不足したときに自宅を売却して現金化することもできます。
売却するだけなら住むところが無くなってしまいますが、「リースバック」を利用することで、現金化した後にも毎月家賃を支払うことでそのまま住み続けられます。
弊社And Doホールディングスでも「リースバック」をご利用いただくことが出来ます。
弊社のサービスである「ハウス・リースバック」は、お客様が所有されている不動産を買い取り、売却後は賃貸借契約を結ぶことで今まで通りご自宅に住み続けることができます。(※1)
将来的にはお客様のタイミングで再度購入していただくことも可能です。(※2)
老後資金でお困りの方は資料請求・ご相談無料ですので、ぜひお問い合わせください。
※1賃料の未払い等、契約書の記載事項に反した場合は住み続けられない可能性があります。
※2再度購入には別途条件があり、各種諸費用が必要となります。
※取扱には審査があり、物件や諸条件によりお取扱いできない場合もあります。ご利用にあたっては所定の事務手数料と別途登記等の費用が掛かります。詳細はお問い合わせください。
まとめ
年金保険料を払っていないと、老後に老齢年金を受給できないだけでなく、万が一のときも障害年金や遺族年金が支給されません。
老齢年金は10年の納付期間があれば受給資格が発生するので、今からでも払うようにしましょう。
払えないときは免除や猶予を申請すると、納付期間や受給額に反映されます。